セッションテーマ1「企業の社会的責任とサステナブルソサエティ」
座長の久保田政一氏(日本経済団体連合会国際経済本部長,CBCC常任理事)がグローバルコンパクトをはじめとするCSRに関わる各種のイニシァティブ,原則,基準を概説したのち、各々パネリストからのショートプレゼンテーションが行われた。 |
M.ベイトマン氏(社会責任投資研究センター<IRRC>常務取締役,GRI運営委員会・レビュー作業部会メンバー):サステナビリティ、つまり環境や社会的責任にどこまで関わることができるのか懐疑的な企業がまだ多いが、彼等は三つのボトムライン、則ち経済=環境=社会的責任が相互に深く関連していることを理解すべきだ。企業は株主尊重からマルチステークホルダーとの対話へシフトすべきであり、それが自らのリスクの所在を知ることにもなる。企業の責任としてまずGRIが上げられるが、このほかSA8000,AA1000などの基準や イニシァティブがある。これらは重複する項目もあるが、いずれかひとつを満たせばよい、というものではない。各ステークホルダーにとってそれぞれ重要なものがあるはずでステークホルダーの間のコンセンサスを得ることが重要になるだろう。グリーンウォッシュについては企業批判に走りがちなNGOとの対話がとくに重要となろう。またCSRの概念は単一ではなく、ステークホルダーとの対話によってそのキーファクターは今後変わっていく可能性がある。 |
Q1: | 中国産野菜の農薬問題、食品添加物問題など食品流通業はどういう対応を考えるのか? | |
A1: | 前例のない問題で技術的な困難もあり対応策の作成方法が不明だ。「・・・すべし」というルールは作れるがその先どうするのか難しい。経営の監視体制が作られつつあるがいまだその途上であり、これは日本のみならず欧米も悩んでいるところだ。 |
Q2: | ステークホルダーとの対話が重要、ということだが、ステークホルダーすべてが対話能力を持っている訳ではない。育成することが必要ではないか? | |
A2: | 確かに消費者は分散化され力がない。彼等と対話する為に企業は知識,経験など自己蓄積の活用をはかるべきだ。一方、ステークホルダーのサイドでもNGOが代理人となるなどが考えられる。 |
Q3: | 途上国での事業活動に伴う環境問題悪化と雇用機会提供との矛盾についてどう考えればよいのか?ステークホルダーの間に尊重(優先)順位があるのだろうか? | |
A3: | 児童労働の問題も同様だが、教育を行いつつ雇用するということでよいのか?解答は得られていない。企業、受け入れ国双方で協力して解決策を探るべきだろう。 |
まず、座長の岡部一明氏(東邦学園大学経営学部助教授)が、さまざまなソーシャルアントレプレナーからの活動紹介を通して、社会的課題への事業的アプローチの可能性を汲み取ることができるだろうと導入、これを受けてパネル4氏からのプレゼンテーションでセッションが進められた。 |
K.ダイグルマイヤー氏(ジュマベンチャーズチーフストラテジスト):ジュマベンチャーズは都市部の青少年に雇用と事業を提供・支援する社会事業型NPOである。拠点のサンフランシスコで家出少年、学生、ドロップアウト青少年に職を与えるべく、キャンディメーカーB&J社と連携、経営を開始した。その後彼等のレベルアップ研修が必要と判断、研修プログラムサービスを加えた事業モデルを組み上げ軌道にのせることができた。ジュマのこの挑戦の成功のカギは辛抱強さとアイデアを膨らませるイマジネーションの力であった。 |
(文責:シンポジウム事務局 竹林忠夫) |